■横浜のれん会

 池波正太郎は書いている。
 「以前の、いかにも牛鍋屋らしい店構えが、近年はすっかり改装されてしまったけれども、何といっても安くてうまい」
 イセぶらも4丁目のこの辺りになると曙町2丁目の本店のまわりに原色の派手な看板の店が並んできて、ネオンをチカチカさせる。そんな中で、佳き時代の古いたたずまいを強く残している店で、あたりのケバケバしさを無視したかのようである。
 創業は牛鍋全盛の明治28年。故郷の武蔵野を後にして出てきた荒井庄兵衛が創業者。「開化のお味は路面電車のお値段で」PRも堂に入っている。庶民の食べ物と謳(うた)い、牛めし・牛そばがチンチン電車の初乗り運賃と同額にしたのが当たった。あまり甘くない醤油味で煮込んだ牛鍋をビヤ酒(気発の酒・ビール)で楽しみ、その後で飯を食べるのがハマの粋なスタイルともなった。

 いち早く、牛なべ用電気なべ(他店では炭火)を用い、店の庭にはモーターを使って滝を出現させて客をびっくりさせた。
 店は横浜大空襲で焼失、登良吉も他界した。
 3代目の精一はスイトン屋から出直し、店を見事に再現。4代目の一雄社長は「牛肉を扱う秘訣は仕入れと包丁さばきにある。肉は切り方ひとつで軟らかくも硬くもなる。店では、仕入れは「半丸」(一頭の半分)が原則。包丁さばきは永年のベテラン料埋長の指揮のもと、毎日包丁で切り分けているという。
 メニューは銘柄牛のコースのほか「牛なべ定食」「牛さしみ」「牛皿」など。ほかにも、しゃぶしゃぶ、オイル焼、ビフテキなど和風牛肉料理なら何でも揃う。入り口は二つ。1階は気軽に入れるテーブル席。2階は宴会用のお座敷席で、個室のほか60人までの広間があり、適当に間仕切りもできる。

 初代は農業はイヤと20歳で来浜したが根っからのアイデアマンでもあった。庶民相手に安く牛なべを売る商法で人気を得た。2代目登良吉は婿養子で戸塚の農家の出。実直な一面、人一倍の商売熱心。
 朝一番で市場に出かけ、安くて良い品には片っ端から「荒井屋」の印が押されており、他の人を口惜がらせたという。また先代同様アイデア商法に優れており、老舖の基盤を確固たるものにしている。

〒231-0057
住所:横浜市中区曙町2−17
電話:045−251−5001
FAX:045−251−5096
交通:JR根岸線関内駅北口 徒歩8分 
市営地下鉄伊勢佐木長者町駅 徒歩5分
京浜急行日の出町駅 徒歩7分
定休日:第3火曜日
営業時間:
【平日】11:30〜15:00/17:00〜22:00
【土日祝】11:30〜22:00
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